高橋優子作品の紹介と解説(三戸大神宮ステンドグラス)

~風薫る大正浪漫 神樂(うたげ)~

風薫る大正浪漫  古漂う雅  華やぐ宵の宮
灯(ともしび)はそっと ステンドグラスに色を添え
雅楽の調べ ゆるやかに響く
集いし人々の 歌声と舞  喜びに満ちて 宵は更けゆく
紡がれし歴史の 光と影  心に宿る安らぎと平和
古より今へと続く 美しき調べ 「神楽(うたげ)」



~三戸大神宮に捧ぐ 光と伝統の結晶~

三戸大神宮の拝殿と向拝に奉納された荘厳なるステンドグラス作品の数々は、デザイナーであり作家の高橋優子氏によって創作されました。天照大御神様を祀る400年以上の歴史を誇る神社の御社に、日本の和の文化と伝統の粋を凝らしたこれらの作品は、まさに現代に息づく芸術品でございます。

~神々しい光と伝統が織りなす大正浪漫~

作品の着想は、雪残る青森の地で、奇跡的な晴天の日に天照大御神様への祈りと共に得たインスピレーションにございます。澄み切った青空と雲間から差し込む太陽の光、そして悠然と流れる雲の情景が、デザインの源となりました。この神々しい光の演出に触発され、デザインはわずか3日で完成。しかし、作品に深みと奥行きをもたらすため、ガラスの色、柄、模様、素材、それぞれの特徴を最大限に活かすガラスの選定には、実に3ヶ月もの歳月が費やされました。日本の伝統的な紋様や独自の模様を取り入れ、繊細な木工の組子細工と融合させることで、洋のステンドグラスでありながら、大正浪漫の薫りを漂わせる独創的なデザインを総合的に考案。伝統的な組子細工職人の技と、組子の後ろには乳白のモトル系ガラスを重ねており、唯一無二の光の芸術を創り上げております。

~込められた意味と願い:三部作が語る物語~

高橋優子氏が手がけたこれらの作品は、三戸大神宮の歴史と信仰、そして日本の美意識が融合した、まさに現代に生きる文化財と言えるでしょう。それぞれの作品が持つ物語と意味を知ることで、訪れる人々はより深くその美しさを感じ取ることができます。

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・拝殿ステンドグラス「神楽(うたげ)」 (2022年6月奉納)・

日は傾き、夕闇迫る頃。宵の宮の灯篭にほのかに明かりが灯り始め、拝殿のステンドグラスにも光が差し込めば、奥深き色合いは、さながら大正浪漫の絵巻物を見るがごとし。雅楽の調べに誘われ、人々は集い、歌い、舞う。その喜びに満ちた賑わいと、雅やかなる美が宵の宮に華を添え、いざ「神楽(うたげ)」の始まりを告げる。左上の円は太陽の神たる天照大御神様の「光」を、左中央の意匠は着物の裾を、右上の蝶の羽は着物の袖を思わせ、素材に込められた唐草、鱗、榊、槍、絵馬、蝶の羽、花模様、桜、組子模様、麻の葉亀甲、七宝亀甲は、それぞれ繁栄、厄除け、神聖、円満など、多岐にわたる縁起と願いを表現しております。
H1750mm×W532mm×2 ステンドグラス
H1750mm×W758mm×2 左右一体非対称

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・向拝ステンドグラス「結々(ゆい)」 (2023年6月奉納)・

「神楽(うたげ)」が奏でる雅楽の音色に乗せて人々が集い、歌や踊りを楽しむ様子から着想を得た「結々(ゆい)」は、人と人との繋がり、そして数多のご縁への願いを込め、結びの美を表現しております。日本の「結びの文化」を象徴する二重叶い結び、お守りにも用いられる結びを取り入れ、また、丸く長い糸を巻いて作ることで末長い幸と物事が丸く収まる縁起を担ぐ手毬をモチーフにしております。組子、榊、水の流れ、障子などもその意匠に組み込まれ、日本の伝統美と深い願いが融和した作品となっております。
H268mm×W1798mm×1
H268mm×W748mm×2

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・向拝柱 灯籠ランプ「紅灯(くれなゐ)」 (2024年7月奉納)・

古からの風情を纏う「紅灯(くれなゐ)」の灯りが、見る者を大正浪漫の雅なる世界へと誘います。日本の伝統色であり、人生の節目に彩りを添え、慶事にも用いられ、更には魔除けの意味をも持つという「紅」の色彩は、その名に雅な文字を冠し、作品の魅力を一層引き立てております。古風な趣を演出するため、和紙のような質感が特徴のヤカゲニーガラスを用い、鉄装飾では「紡ぐ」というテーマを、綱を編んだようなシルエットと組子で表現いたしました。黒の重厚感と鉄の持つ風合いとその趣。時代と共に紡いできた歴史、そして「今までも、そしてこれからも」という悠久の願いを、作品を通して深く感じさせるものでございます。
H265mm×W230mm×4 ランプ
H1780mm×W125mm×2(鉄装飾)
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~高橋優子氏からのメッセージ~

今、また一つ、新たな作品が生まれようとしています。
この作品に触れる皆様には、脈々と続いてきた歴史や文化に想いを馳せていただきたく存じます。そして、大正浪漫の風を感じながら、どうぞ自由に想像を巡らせてみてください。
私の願いは、皆様がこの作品を通じて、心健やかで豊かな気持ちになり、平和と安らぎを感じてくださること。それが何よりの幸いでございます。

        デザイン、構成、創作                       
  ステンドグラス作家  高橋 優子